これまで都市計画決定から約35年にわたり、段階的に再開発事業が進められてきた京王線府中駅南口地区。その最終章として誕生したのが、駅直結の「プラウド府中ステーションアリーナ」です。商業、公共公益施設、クリニックモールなどと一体化した住まいが完成するまでの経緯と見どころを、本件担当者が語ります。
(話 : 開発企画本部 プロジェクト推進部 推進二課 山内 悠生)
すでに完成済みの第二地区、第三地区に続き、今回再開発された第一地区は、もともと小規模な店舗や住宅が密集した地域で、長年この地に愛着を持つ地権者の方や借家人の方が多数いらっしゃいました。野村不動産は約6年前の2011年に本事業に参画させてもらいましたが、地権者の皆さま方は、それまで1982年の府中駅南口地区第一種市街地再開発事業の都市計画決定以前から長期に渡り、様々な議論を重ね本再開発事業を進めておられました。そのような中、事業の成功に向け、当社も含めた関係各社に対する期待も計り知れず、担当としてのプレッシャーは非常に大きいものでした。
「プラウド府中ステーションアリーナ」は、商業、公共公益施設を含む施設全体の「ル・シーニュ」の7〜15階の部分に位置します。地下1階から4階は87店舗からなる商業施設、地下2階、5階及び6階は府中市民に向けた公共公益施設で構成されています。
複合施設のため、施設計画から工事や管理、運営方法等、建物を計画するところから完成させるまであらゆる場面で関係各社と協議や調整を行う必要がありました。関わる事業関係者も多く、時には10を超える関係各社の代表が集まって会議を行うこともありました。
そのような中でマンションを購入するお客様に対し、プラウドの高い商品性・品質を提供することはわれわれの重要な責務です。
複合施設において住宅の商品性、品質やセキュリティが確保されるよう、時には多くの関係者を巻き込んで住宅側の意見を積極的に説明し、ご理解をいただくことも必要な仕事の一つでした。
もちろん住宅側の意見だけでは施設が成り立たない局面もあるため、施設が成り立つために、どのような解決策が一番適切かを幾度も議論したことが鮮明に記憶に残っています。
建物全体の外観で目を引くのは、低層部のファサードに多用したガラスのカーテンウォールです。
施設東側の駅前は商業のにぎわいを外に醸し、西側は国の天然記念物にも指定されている「馬場大門のケヤキ並木」の木々が映り込むように意図されています。
また、ケヤキ並木の先にある大國魂神社との調和も図り、伝統的な建築物に使われる墨色をアクセントとして用いています。ファサードにはガラスだけでなく、木調ルーバーを多用していますが、これも神社の参道を意識した意匠です。
全体として、ケヤキ並木や大國魂神社の歴史や伝統を踏襲し、街並みに溶け込んだ品格あるたたずまいが創出されています。
歴史ある府中の街のイメージは、住宅内部の共用空間にも踏襲されています。
駅とペデストリアンデッキで直結した2階のマスターエントランスには坪庭があり、ここには府中を代表するケヤキ並木の緑、石畳の石、大國魂神社をイメージした砂利、そして、府中の祭りをイメージした行灯をモチーフにし、デザインに盛り込みました。また、エレベーターホールや専有部の玄関の門構え等にも、墨色を取り込んでいます。
一方、7階には「アリーナパティオ」と名づけた大きな吹き抜けの中庭を設けました。建物に囲まれているため、駅前の喧噪を感じさせない静かな空間です。アウトドア家具や照明を配置することで、都会にいながらにしてリゾート気分が満喫できるような空間としました。
7階のエントランスホール奥には、眺望が楽しめ、パーティ用のカウンターも完備した、コミュニティラウンジを計画しました。ホテルのような高級感を醸し出すために壁面にはイタリア産のタイルや、トルコ産の質感のある石を採用し、ガラスで周囲を囲むことで空間の奥行きや広がりが感じられるような設えとしています。
専有部については、低層部の商業施設のスパン割に対してどのように住宅のスケールを落とし込むか、検討に多くの時間を費やしました。セレクトプランを複数計画し、リビングや洋室を拡大することで少しでもプランのバリエーションを増やす工夫も行いました。
また、多くの住戸が、マンション特有の細長いプランではなく、開口部が広く取れるワイドスパンのプランを採用しています。その特徴を生かすためリビングを間口いっぱいに計画しました。キッチンも、バルコニーに近い位置に配するなど、明るく開放的だとお客様にも評価をいただきました。
私はこの事業に携わってわずか3年ですが、最初に述べたとおり、再開発という長い事業の中でこうして竣工した建物を見ると、非常に感慨深いです。約35年という長い間地元の皆様が着実に積み上げてきた結果がこうして形になり、これから府中駅南口の新しい顔として繁栄していく姿を地元の方々と共に見続けていきたいと考えています。
写真 : 新 良太
※掲載の情報は、2017年12月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部 プロジェクト推進部推進二課 山内 悠生
現在、入社6年目で以前はカスタマーサービス部でマンション引渡後のアフターサービスを担当していました。入社から住宅に関わってきておりますが、今回担当した府中駅南口第一地区の再開発事業では住宅の担当だけではなく、再開発事業のため仮設店舗に入った借家人の方々が新しい建物に再入居する際の交渉も担当させてもらいました。
事業関係者の皆さんの想いを肌で実感したことで、それだけ多くの人生がかかわる重要な事業なんだと実感しています。今後新たな再開発事業に携わることになりますが、今回の経験を生かし、将来は「君がいなければこの事業は成り立たなかった」と言ってもらえるような働きができるようになりたいです。