都心ながら奥まった敷地に誕生した「プラウド芝公園」のコンセプトは「THE SECRET OF TOKYO」。東京の隠れ家にふさわしい上質な邸宅を目指し、すみずみまでデザインに気を配ったというプロジェクトの開発経緯と見どころを担当者が語ります。
「プラウド芝公園」の敷地は港区の中でも奥まった位置にあって、知る人ぞ知る「七曲り通り」の途中にあります。この辺り一帯はかつて、かの篤姫も過ごした薩摩藩の上屋敷があった場所です。七曲り通りとはその名のとおり、7回も折れ曲がっていて、敵の侵入を防ぐためではないかといわれています。
そうした立地や歴史的背景をもとに、基本計画で打ち出したコンセプトが「THE SECRET OF TOKYO」でした。つまり、東京の隠れ家のようなイメージです。今回、デザイン監修をお願いした南條設計室と一緒に、それをどう表現するかを考えていきました。
まず重視したのが、邸宅としての構えです。通りから中が直接見えないよう、少し入り組んでいるデザインのアプローチを設けました。また、表通りから歩いてくるとまず目に付く位置に駐車場へのゲートがあるため、通常の金属のシャッターではなく、木目調のパネルを用いた上質で落ち着いた雰囲気のゲートを採用し、周辺の壁には天然石をあしらって、建物本体との一体感を見せています。
曲がりくねった小径を進み、駐車ゲートの先まで進むとアプローチが現れ、導かれるようにエントランスへ向かうという、道路からの奥行きが感じられる隠れ家らしい構えになったのではないでしょうか。
今回、邸宅の表情に深みを持たせるため、外装・内装ともに非常に多くの素材を用いており、その選定に苦心しました。
外壁だけでもベージュのタイルをメインに、数種類の天然石やタイルを組み合わせていますが、実際に日光が当たったとき、それらがどんなふうに見えるかを検証するため、晴れた日に関係者全員が集まって、外に並べてチェックをするなど、細かい見え方にも気を使いました。
内部の共用空間も、多様な素材や仕上げを採用しています。
たとえば、天井高3.5mのエントランスホールは、逆L字形のゲートのようなデザインを連続させ、お客様をお迎えするにふさわしい格調ある空間に仕立てました。壁面には薩摩藩にちなみ、薩摩切子をモチーフにした特注の白いデザインパネルを貼っています。さらに、逆L字形部分のスリット内側に和紙調の壁紙をあしらい、照明をつけるとぼんやりと光のラインが浮かび上がる仕掛けです。
エントランスホールの突き当たりには全面開口があり、四季折々の緑と水景が楽しめるプライベートガーデンが眺められます。ホールからこのガーデン沿いに続くコリドー(回廊)を経由して、左右2台のエレベーターに至るのですが、このコリドーのデザインも工夫しました。
敷地に隣接する建物が迫っているため、目隠しになるよう、全面開口の上部に木質系のルーバーを設置しましたが、特に力を注いだのがこのルーバーの製作です。コリドーを歩いていくときに、動きが感じられる空間にしたいと考え、台形のルーバーを上下互い違いに組み合わせました。初めての試みだったため、何度も打ち合わせをして、試行錯誤しながら何とか形にした作品ですが、出来上がってみるとデザインのおもしろさだけでなく、より奥行きが出て視線を遮りやすい効果もあり、力を注いだ甲斐があったと思います。
コリドーの脇にはラウンジを設けました。車を駐車場から出す間、他の家族がプライベートガーデンの緑と水を眺めながらゆったり待てるような、そんな雰囲気の空間を意識しました。
住戸のプランは都心の物件には珍しく、全戸南向きというのが最大の魅力です。
また、1フロア当たりの戸数は3〜4戸が基本ですが、それに対して東西に2基のエレベーターがあります。1台のエレベーターで乗り降りするのは1フロア当たりわずか1〜2世帯になることになり、非常にプライベート感を高めたつくりを実現しています。
2戸に対して1基のエレベーターを設置することには、実はもうひとつ別の利点があります。これによって、エレベーターと各住戸をつなぐ共用廊下が不要になるため、すべての中住戸に南北両面バルコニーを設けることが可能になるのです。つまり、プライベートな隠れ家の趣だけでなく、採光や通風、開放感も増すことになります。
エレベーター前の内廊下や玄関前のアルコーブも、扉のデザイン、内装材の選定、照明など、ディテールにまで気を配りました。共用のエントランス周辺と各住戸の玄関の空間は、入居後にゲストをお迎えするうえで非常に重要な部分です。そこがきちんとデザインされていないとお客様の心に響く建物にはなりませんから、今後も力を入れていきたいと思っています。
写真 : 新 良太
※掲載の情報は、2018年2月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部事業推進二部推進一課 白井 真理子
「プラウド芝公園」は私が入社して初めて、用地の取得から竣工まで携わることができた物件です。足場がはずれて外観やアプローチが見えたときは、関係者だけでなく近隣の方からも「良いマンションができた」と言っていただき、うれしかったです。外観の印象がいかに大切かを改めて学びました。意外だったのは、共用部のデザインが女性的だという評価をいただいたことです。特別に意識しなくても女性らしさが出ることは自分が担当する意義のひとつだと思うので、これからも男性には真似できない、女性らしい感性を活かしたデザインを考えていきたいです。