建築デザイン プラウド銀座東

南北の公園の緑を取り込み
街に残る異国の空気を再現する

かつて外国人居留地だった歴史を持ち、隅田川の川辺に近く、銀座も徒歩圏内の明石町の一角。しかも、南北の両面が公園に面するという稀有な環境に建つ「プラウド銀座東」。土地の魅力を最大限に生かすべく、どんな建築を発想し、形にしたのかを担当者が語ります。

メインビジュアル

両面バルコニーと高い天井高を実現した住まい

「プラウド銀座東」の敷地は都心とは思えない、非常に稀少な環境にあります。まず明石町といえば、かつて外国公館が数多く置かれ、外国人が大勢住み、教会や学校を建てた外国人居留地として知られています。聖路加国際病院は居留地跡に建てられたもので、趣ある旧病院棟は西洋を感じさせる街の歴史を今に伝えています。また、すぐそばを隅田川が流れ、水辺の眺めを享受できる一方、銀座まで徒歩圏内という点も魅力です。

さらに、この敷地の最大の魅力は、南北の両面が公園に面している点です。こうした得がたい好環境をいかに取り込み、建物の魅力に転化していくかが、プロジェクトの大きなテーマになりました。

公園の緑を最大限に取り込むなら、両面にバルコニーを設けた住戸を基本にして、天井高もできるだけ高く取るのが理想的です。そこで、通常なら14階建てにするところを、高い天井高を確保した13階建てとし、なおかつ上層階はワンフロアに両面バルコニーの2戸を配するというプランを採用することにしました。

2本の垂直ラインと空や緑を映すガラス手すり

外観は南北両面とも、中ほどに垂直のラインが2本入っているのが目を引きますが、この「ダブルマリオン」は、住戸ごとのバルコニーを隔てる間仕切り壁の役目を果たしています。垂直のラインを強調して遠くからも目に入りやすくすると同時に、通常の隔て壁より重厚感を持たせ、よりプライバシーをしっかり守った建物であることを表現しました。

また、手すりには通常より反射性が高いガラスを用いたので、周辺の緑や空の青さが映り込む一方、外からは内部がより見えにくい効果があります。

足元の基壇部は、仕上げの異なる御影石貼りの壁面によって重厚感を出しました。今回は公園の緑を取り込むことを主眼にしたため、植栽は最小限ですが、目障りな支柱を立てずに済むよう、早い段階から専用の畑に仮植えして根を張らせたうえで植え込むなど、目に見えない工夫を施しています。

礼拝堂をイメージしたホテルのような共用空間

内部のエントランスホールは、外国人居留地や聖路加国際病院の旧館にある礼拝堂のイメージを取り込みたいと考え、今回プラウドでは初めて、アメリカのインテリアデザイン事務所ハーシュ・ベドナー・アソシエイツにデザインを依頼しました。同社は名だたる世界のラグジュアリーホテルやリゾートを数多く手がけている事務所です。

グレージュトーンのシックな色合いを基調に、折り上げ天井で高い天井高を強調し、照明器具やベンチもオリジナルで製作して、高級ホテルのような上質な共用空間を実現しました。天井から吊った3灯のペンダントライトは、居留地時代、この界隈を照らしたガス灯のイメージを生かしたデザインです。

さまざまなアートもアーティストに制作していただきました。セラミックを用いたメインの立体的な作品は公園の木漏れ日を、ホールの左奥(写真正面)に飾られた作品は隅田川の流れをモチーフに、それぞれ別の作家に依頼したものです。

ディテールの積み重ねが上質さを生み出す

このマンションでは、単に高級な材料をふんだんに使って高級に見せるのではなく、特に細かい部分に細心の注意を払ってデザインした点も特徴の一つです。

たとえば、エントランスのドアの上部には目立たないように点検口を設けていますし、先ほどのホールのアートも、実は5分割された背景の最上部が点検口のパネルになっています。

また、消防用のホースを連結する送水口にも気を配りました。通常は複数の送水管や赤い表示が目立つ例が多いのですが、ここでは外壁の石の割り付けに合わせて台座のプレートをつくり、消防とも協議を重ねて、シンプルな送水口をつくることができました。

今回は両面の公園の緑を最大限に生かすべく、両面バルコニーの住戸を基本にし、階高を高くして階数を減らすという冒険的な部屋割りを実現することが表のテーマだとすると、細かなディテールによって上質さを出すことがもう一つの裏のテーマだったといえるかもしれません。

写真 : 新 良太

インタビュー

野村不動産 都市開発事業本部建築部建築四課 新井 大介

以前は自身で設計事務所を営んでいましたが、野村不動産が建築系の人材を募集していることを知り、自らの可能性を広げるべく、2007年に中途で入社いたしました。最初はオフィスビル、次いで分譲住宅事業を担当し、この10月から賃貸マンションとホテルの計画に携わっております。プラウド銀座東はマンションづくりの集大成として、これまで培ってきたものを結集したつもりです。
今後は土地を見たら、何を建てるのが最善かを判断し、建物用途を問わず、街にとっていいものができることが自分の目標です。

野村不動産 住宅事業本部事業推進一部推進三課 谷口 豊

名古屋支店やカスタマーサービス部での勤務を経て、1年半ほど前に今の事業部に異動しました。新井さんにもいろいろ教えていただき、よりディテールにこだわる意識が強くなった気がします。目下、竣工1年後のマンションにご入居のお客様へのアンケートをまとめる仕事も担当していて、思わぬ発見があります。今後はそうしたお客様の生の声を生かしたマンションづくりができたらいいなと思っています。

プラウド銀座東

所在地
東京都中央区明石町
交通
東京メトロ日比谷線「築地」駅 徒歩9分
東京メトロ有楽町線「新富町」駅 徒歩9分
総戸数
32戸
竣工
2018年8月
※掲載の徒歩分数は、2018年11月時点の「不動産の表示に関する公正競争規約」に沿った表示となります。

※掲載の情報は、2018年11月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。