武蔵野の豊かな緑に囲まれた高台に建つ「プラウド仙川緑ケ丘」。建物の外観、エクステリア、共用スペース、各住戸のプラン、すべてにおいて「環境に調和し、かつ環境を取り込む」姿勢を貫いたデザインの見どころを担当者が語ります。
「プラウド仙川緑ケ丘」は武蔵野台地の南部にある調布市の中でも高台にあり、南側には神社と寺の境内が位置しています。また、すぐ近くには武蔵野の面影を今に伝える白百合女子大学のキャンパスもあります。こうした豊かな環境を採り入れると同時に、周辺に調和したマンションをつくることがこのプロジェクトの最大のテーマとなりました。
外観のポイントの一つは、いかに恵まれた周辺の環境を取り込むかということです。たとえば、バルコニーの手すりにはよく用いられる乳白ガラスではなく、熱線反射ガラスを採用しました。このガラスは昼間は鏡のように反射するので、外から見ると周りの緑が映り込む一方、室内は外部からは見えにくく、かつ内から外の眺めは見通しやすいという利点があります。
もう一つのポイントは、外観が平板なイメージにならぬよう、陰影を出すということです。バルコニーの床やマリオン(住戸同士を仕切る壁)の側面に細かな凹凸をつけたのはその一例で、彫りの深い表情を演出しています。
外壁には周りの緑が映えるように、白系のタイルを採用しました。プラウドシリーズには珍しい10cm角の正方形のタイルで、遠くから見ると何色も使ったモザイク模様のように見えますが、実はすべて同じ色です。なぜそう見えるかというと、タイルの表面にリブ(凹凸をつけた縞模様)があるものとないものがあり、リブの向きも縦と横を交ぜて、あえてランダムに貼っているためです。そうすることで光の当たり方によって表情を変えるデザインとしています。
エクステリアで力を入れたのは、道路沿いのフェンスです。これは実は、駅への通り道にある白百合女子大学のフェンスとの連続性を意識してオリジナルで製作したものです。といっても、女子大のクラシカルなフェンスをそのまま踏襲するのではなく、素材は同じロートアイアンを使用しつつ、曲線ではなく直線を生かすことで、現代風にデザインし直しました。
また、植栽も女子大の名物であるモミジをはじめ、近くの施設や寺社に生えた樹木を意識して植え込み、街の景観との一体化を図っています。
共用部のデザインについては、歩を進めるごとに見えてくるシーンが変化するような空間をつくりたいと考え、動線上の随所にアイストップをちりばめました。
最も象徴的なのがエントランスホールです。曲がり角や壁の突き当たり、側面の壁などにさまざまなアートや緑を配し、出かけるときと帰宅したときでは、それぞれ違うシーンが見えるように配慮しています。
ここでは、長い通路の天井をできるだけ広く美しく見せることにも細心の注意を払いました。天井にはエアコンや感知器系統など、設備が設置されることが多いのですが、隠蔽型のエアコンを採用し、折り上げ天井の脇に吹き出し口を設けたのです。関係者の皆さんと何度も協議を重ねた結果、なんとかすっきりした天井を実現することができました。
こうした一連のシーンの最終地点に当たるのがエレベーターを出たところです。そこで、各階のエレベーターホールの正面にロートアイアンとステンレスを組み合わせたアートを飾りました。フロアごとに形が異なるため、全部で7種類のデザインがあります。
専有部のプランは、寺社の境内に面した南向きの住戸に関してはすべて、眺めが享受できる横長のワイドリビングを基本にしています。また、梁の高さを通常より薄くすることでサッシの高さも高くし、中央から左右に大きく開く「センターオープンサッシ」を採用しました。
さらに、下の部分が通常のサッシより平たくなったフラットサッシを設置しているので、オプションのウッドデッキをバルコニーに敷くと、室内の床との段差がなくなり、より内と外の一体感が増します。
エントランスの天井の仕上げや住戸の窓まわりに共通して言えるのは、見える部分を美しく見せるためには、見えない部分に構造や設備をどううまく納めるかといった、ディテールの積み重ねが欠かせないということです。今後もそうした目に見えない部分のデザインに、手間を惜しまず取り組んでいきたいと思っています。
写真 : 新 良太(外観以外)
※掲載の情報は、2019年3月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部事業推進二部推進一課 宮田祐次
入社して2年目以降はずっと建築をつくる仕事に携わっていますが、最初の1年間は住宅営業部に所属し、マンション・戸建てを販売していました。当時感じたのは、営業担当が専有部だけでなく、外観や共用部など、建築的な特徴を丁寧に説明することで、物件に対するお客様の理解が深まり、より好印象を持っていただけるということです。それはきっと購入後のお住まいへの愛着にもつながるのではないでしょうか。そのためにも、営業と密にコミュニケーションを取り、建物の魅力を伝えていくことが大切だと今改めて感じています。