再開発が急速に進む虎ノ門エリアの一角に、建て替え事業によって誕生した「プラウド虎ノ門」。住まいとしての落ち着きを保ちつつ、新しい時代にふさわしい品格あるデザインを加味した建築の魅力を担当者が語ります。
ここ数年、虎ノ門ではあちこちで大規模な再開発事業が同時進行中です。「プラウド虎ノ門」は、そんな大きく変貌を遂げつつあるエリアの一角に建つ、地上18階地下2階建てのマンションです。
もともと敷地には築40余年を経過した8階建て31戸のマンションが建っていました。それが建て替えにより、新規分譲分の24戸を含む総戸数59戸のマンションに生まれ変わったのです。日比谷線神谷町駅から徒歩2分、隣地にはオフィス、商業施設、ホテルなどが入居する大規模複合施設「東京ワールドゲート」が建つという、稀少な立地条件が魅力です。 あまり華美なものは必要ないという地権者の皆さんのご要望を反映し、外観は周りのビルのように白を基調にするのではなく、住まいとしての落ち着きや安らぎが感じられるデザインでまとめています。
ただし、オーソドックスな中にも現代的な品を感じさせたいと考え、要所要所にテーマカラーの「金」をあしらいました。たとえば、エントランス上部の壁面にはゴールドのカラーガラスを貼っています。また、手前の歩道と駐車場に至る車路を仕切るスチールのフェンスもモニュメントに見立て、現場で金色の塗装を施しました。微妙なムラを出すために、職人さんと一緒に創ったものです。
エントランスホールは天井高約2.9mの大空間です。郊外型のマンションなら、ここにライブラリーや子どものプレイルームなど、さまざまな共用スペースをしつらえますが、ここでは空間の広さや天井の高さで空間の「格」を感じさせるべく、ガラスのオブジェをドラマチックに見せています。オブジェはトロフィーをイメージし、彫刻家の家住利男さんに制作していただきました。
外装・内装ともに、今回の物件で意識したのが、材料の間に入れる「目地」のデザインです。幅や奥行き、色や材質、コーナー部の納まりなど、細かい部分にまで気を配り、端正な「目地」を意識してつくることで、建築の品格が醸し出されるからです。
共用施設として権利者の方々から要望があったのは、エントランス脇にラウンジがほしいということでした。ここも落ち着きと同時に華やぎを出したいと考え、金色をあしらった絵画と照明を配しました。虎ノ門の象徴である旧ホテルオークラ東京の客室の絵画を手がけた画家の松原賢さんに、新しい虎ノ門をイメージした絵を依頼し、この絵を中心に、周りを凹凸のある城壁のような御影石貼りの壁面で囲んでいます。
共用廊下は、内廊下が基本のホテルライクな空間に仕上げました。木目調の扉をマンションでは珍しい鏡面仕上げにすることで、上質さを演出しています。
各住戸のインテリアもラグジュアリーホテルのような空間を目指してデザインしました。たとえば、洗面台はカウンターだけでなく、洗面ボウルの立ち上がり部分も御影石で包み込みました。水栓金具はクラシカルなホテルを思わせる、イタリアZucchetti社の製品です。ちなみに、内装デザインの提案は、世界の有名ホテルのインテリアデザインを手がける設計事務所、ハーシュ・ベドナー・アソシエイツ(HBA)の協力を得ました。
長年住んでこられた地権者の皆さんの多くは落ち着きや安らぎが感じられる住宅らしさを望まれますが、新規分譲分を含めた全体をデザインする私たちとしては、現代的な新しさも加えて魅力あるマンションにしたいと考えます。その合意形成が建て替え事業のむずかしいところですが、決して互いに対立するものではなく、うまく交じり合うことができるものだと思います。
今回、以前からここにお住まいの方々が「いい建物ができて、本当によかったです」と満足そうにおっしゃるご様子を拝見して、それを確信しました。単なる最大公約数のような無難な提案ではなく、ときには誰も見たことがないような斬新なアイデアを盛り込んで、お客様の住まいのイメージを描くことが、新旧それぞれの住民の皆さんが「あ、自分はこういう暮らしがしたかったんだ」という新たなライフスタイルを再発見するきっかけにつながるのではないでしょうか。
※掲載の情報は、2020年1月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部事業推進一部 新谷雅樹
都心の物件か郊外型かを問わず、今この場所で求められているのはどんな住まいかを想像し、一歩先行く世界観をつくり上げ、そこにふさわしいプランニングを提案していくことが、プロジェクト成功の秘訣です。そのために心がけているのは、日々美しいものを見て考えることです。幸い、東京には美術館やギャラリーなどが無数にあるので、毎週必ずどこかに出かけます。会期中の講演を聞いたりするといろいろ発見があり、自分だけのものにしておくのはもったいないと、メモを社内のみんなにメールなどで共有することもあります。そうした「経験の共有」も大事な務めかなと思っています。