華やかさと落ち着きを兼ね備えた、稀有な街・代官山。そんな街の二面性を象徴するような二つのレジデンス、「プラウド代官山フロント」と「プラウド代官山テラス」が誕生しました。プロジェクトの経緯とデザインの見どころを担当者が語ります。
代官山は商業エリアと住宅エリアがうまく共存した街として知られています。敷地は表通りの八幡通りと裏通りの二つの道路に挟まれ、表通り沿いは第二種住居地域、裏通り側は第二種低層住居専用地域という二つの用途地域にまたがった、まさに商業地と住宅地の連結点にあります。そこで、この代官山の街を象徴するような土地にふさわしい、「賑わい」と「落ち着き」をつなぐようなマンションをつくることが、このプロジェクトの最大のテーマとなりました。
そこから生まれたのが、八幡通り側に12階建ての高層棟「プラウド代官山フロント」、裏通り側に4階建ての低層棟「プラウド代官山テラス」を配置するという構成です。さらに「フロント」は、主に住宅からなる高層棟と店舗からなる低層棟を連結し、足元に商業の賑わいを生み出すという、住宅と商業が一体となった複合施設として計画しました。
もともとここにあった商業施設に表通りと裏通りを結ぶ抜け道があったこともあり、文字どおり「賑わい」と「落ち着き」をつなぐ小径を設けることにしました。「フロント」の高層棟と離れの間に設けた、店舗を挟んだ貫通通路を経由して奧の階段を上り、高層棟の裏手へ回り込んでいくと、裏通りの「テラス」のエントランス脇に通じます。住人だけでなく街の皆さんもそぞろ歩きが楽しめる、開かれた緑豊かな散策路です。
今回、ロンドンを拠点に世界で活躍するデザイン事務所「PDP LONDON」が全体のデザインを手がけていますが、彼らがデザインコンセプトとして掲げたのが「クラフトマンシップ」です。ラグジュアリーとは単にきらびやかなものを集めるのではなく、職人の技術の粋を尽くして初めて生まれるものだという彼らの考えに基づき、それを象徴する要素として、「フロント」と「テラス」に共通のデザインコードを定めることにしました。それが、曲線・自然素材・メタルワークの三つです。
曲線が最も顕著に表れているのは「フロント」の外観です。滑らかなアールを描いた形は、代官山のランドマークにふさわしいデザインであるだけでなく、外周部とコア(共用廊下やエレベーターなどがまとまった中央部分)だけで建物を支えることができます。そのため、住戸を横断する梁が不要になり、多様な住戸プランが可能になると同時に、すっきりとした室内を実現できるのです。外装は多様な色合いの素材の重なりで構成されています。なかでも、各層間の水平のアルミエッジパネルは何度も試作を繰り返すことで、ようやくデザイナーが目指す天然石のような微妙な中間色を再現することができました。
一方、「テラス」のファサードは特注のタイルと「くの字」形に突き出したアルミルーバーのコントラストが印象的です。ルーバーは一部住戸の給湯器や給気口を収める役割も兼ねており、より外観の美しさを際立たせています。一見、直線的に見える「テラス」ですが、各層間に設けた水平ラインのフィン(
自然素材の中でもふんだんに用いたのが天然石です。また、メタルワークも外装・内装ともに多用されていますが、特にデザイン要素として繰り返したのが、ハニカムのモチーフです。写真は「テラス」の石の外壁と、駐車場のスライドゲートに施したものですが、内部にも随所に見られます。
「フロント」のエントランスは八幡通りの賑わいからできるだけ距離を取りたかったので、長いアプローチと大きな庇のある車寄せを設けて、奥行きと落ち着きが感じられる、邸宅らしい空間を演出しました。
ラウンジは天井高約3mを確保した広々とした空間で、奧の美しい光壁が目を引きます。天然石のオニキスを薄くスライスしたパネルとハニカムのメタルスクリーンを組み合わせ、背後から照明を当てたもので、独特の存在感を放っています。
ラウンジの天井は途中から滑らかに高さが変化した折り上げ天井になっていますが、これは上階の外壁の曲線と呼応させたデザインです。
「テラス」のラウンジも「フロント」と同様に、オニキスとハニカムの光壁を配しました。エントランスのドアが開いた瞬間、ソファやラウンジチェアが置かれた奥行きのある空間が広がり、突き当たりの光壁が目に飛び込んできます。実用的な接客の場というよりは、悠然たる雰囲気を演出することによって「格」を体現した空間といえるでしょう。
代官山はヒルサイドテラスを軸として、時間をかけてまちづくりが進められ、今も商業施設・住宅・オフィスがバランスを保った街並みを維持し続けている、都内でも稀有な街です。「プラウド代官山フロント&テラス」もその街の魅力を承継し、代官山特有の文化を発信する場として、一翼を担うことができれば幸いです。
プラウド代官山フロント&テラス
「代官山」駅に2つのプラウド誕生。駅徒歩4分、商業一体開発のフロント。駅徒歩6分、低層邸宅のテラス。
プラウド代官山フロント
※こちらの物件は完売しました
プラウド代官山テラス
※こちらの物件は完売しました
※掲載の情報は、2021年9月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部 事業推進一部 推進一課 芳賀
今回、特に外壁の素材や仕上げは多種多様で、試行錯誤しながら特注でつくり上げたものばかりだったので、全容を目にするまでは内心かなり緊張していました。いくらパースで見たりモックアップ(実物大の模型)をつくったりしても、完成形の想像がつきかねたからです。それだけに足場がはずれ、うまくいったことを確信した瞬間はとてもホッとしました。微妙な色の重なりが生み出す独特の世界観は街の雰囲気にも馴染んでいて、外国人デザイナーだから出せたものではないかと感じました。代官山は個人的にもとても好きな街なので、この建築が街のランドマークの一つとして生き続けてほしいと願っています。