閑静な高台の第1種低層住居専用地域に誕生した「プラウド元代々木町」のコンセプトは「ひらく×とじる」。開放的なガラス面と重厚なタイル面のメリハリを追求した美しいファサードや、街に開かれた大きな吹き抜け空間のエントランスなど、建築の見どころを担当者が語ります。
敷地は小田急線の代々木上原駅と代々木八幡駅からともに徒歩8分の、閑静な高台の低層住宅街の角地にあります。この地にふさわしい落ち着きと、建築としての新しさを併せ持つマンションにしたいと考え、「ひらく×とじる」というコンセプトを掲げました。
エントランスのある東側はガラスとタイルの壁面をバランスよくリズミカルに配し、美しいファサードを実現しています。タイルの部分は厚みの異なる2種類を張り分けることで風格ある表情を出しました。タイル部分の開口部の上下には横ラインを通した黒い金物を設置し、陰影を強調しています。また、ガラス張りのコーナーは角住戸のサンルームを配した部分で、建物を軽やかに見せています。
エントランスの両脇にはシンボルツリーのハナミズキを植え、ロートアイアンのフェンスや石積みの擁壁を組み合わせて重厚感を演出しました。両サイドの壁面には、ロートアイアンを用いた照明をシンメトリーに配しています。
北側には地下の平置きの駐車場に通じる出入口があります。こちらはガラスと黒系のタイルの壁面を組み合わせてメリハリをつけ、全体としての統一感を持たせつつも、東側とは趣の異なる外観をデザインしました。
アプローチを兼ねたエントランスは2層が吹き抜けた、天井高5.5mの大空間です。手前は半屋外、ラウンジがかいま見える部分は室内、さらにその向こうは中庭ですが、素通しのガラスで仕切られているので奥まで一気に視線が通り、奥行きは約23mもあります。鏡面仕上げの天井も、より空間に広がりを感じさせます。19戸という小規模低層マンションにしては大きなボリュームの共用部ですが、道行く人々や訪れたお客様に印象を残すような空間を目指しました。
夕刻、照明が点灯するとまた雰囲気が変わります。上部に見えているのはガラス張りの2階の共用廊下で、吹き抜け空間を見下ろすことができます。通りから見えるスペースではありますが、左奧にある風除室を経由して内部に至るので、エレベーターのあるエントランスホールが通りからは見えず、プライバシーが保たれています。
コンシェルジュデスクのある風除室は、同じ大理石から切り出した石材を左右対称に組み合わせた「ブックマッチ」の壁が目を引く空間です。
ラウンジでひときわ目を引くのが、中庭に配したガラスのオブジェです。代々木という地名は、代々受け継がれてきたサイカチの木またはモミの老木が由来といわれています。グラスアーティストとして知られるマリエンバード工房の野口真里さんに依頼し、そこからイメージをふくらませた作品を水景に見立て設えました。樹木の導管を水流がたちのぼる姿を表現したガラスのオブジェは、夜には背面に備えた アップライトに浮き上がり、クリスタルの粒の輝きとともに昼間とは違った表情を見せてくれます。
ラウンジの脇には、地下駐車場から入るサブエントランスとつながった吹き抜けがあり、空間の広がりを感じさせます。ここにも外部のエントランス照明やフェンスのデザインと呼応させ、ロートアイアンを用いたオリジナル照明を配しました。下は風除室からエントランスホールを見た写真で、こちら側からも照明のある吹き抜け空間が眺められます。
このマンションのもう一つの魅力が、小規模ながらプランのバリエーションが豊富な点にあります。特に最上階である3階のプレミアム住戸は、個性あふれるプランを取り揃えました。富士山や新宿の高層ビル群が望めるルーフトップバルコニーと室内を螺旋階段でつないだ住戸や、玄関ホールと一体になった広いパティオを設け、プライバシーが守られた中で外部の光や風を取り入れられる住戸などがその一例です。
以上のように、隅々のディテールにまで気を配り、「開く」と「閉じる」の絶妙なバランスを追求したことで、街のランドマークにふさわしいデザインを生み出すことができました。今後、落ち着きと品格のある周辺の邸宅街に徐々になじみ、人々に愛される建築になれば幸いです。
※掲載の情報は、2022年3月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部事業推進一部推進三課 大橋 太貴
「プラウド元代々木町」は、土地を取得して更地にする段階から建物の完成まで、設計施工の全過程に関わった思い出深い物件です。設計、施工、監理など、さまざまな立場の関係者と議論を積み重ね、最後に実物ができあがるというすべてのプロセスを目の当たりにしただけに、竣工時の感慨はひとしおでした。学生時代は住宅デザインを学び、いくつかのプラウドを見て、ものづくりに非常に真剣に取り組んでいる会社の姿勢に惹かれて入社しましたが、今も日々それを実感しますし、そのプラウドの企画・推進に携われていることを誇りに思っています。