「時とともに育つ森」をテーマに、緑豊かな中庭と木造の共用棟を設けた「プラウド練馬中村橋マークス」。2022年度グッドデザイン賞を受賞しました。計画中に起こったコロナ禍による社会の大きな変化を受け、住まう人の気持ちに寄り添って再検討を重ねたことが、新しい集合住宅の提案につながりました。担当者がこの建物に込めた想いを動画で語ります。
リモートワークが進み、自宅で過ごす時間が増えると、住まいのあり方はどう変わっていくべきか。その一方で、変わらない価値とは何か──これまでの常識にとらわれず、外観、共用部、専有部のすべてを一から考え直した「プラウド練馬中村橋マークス」。多彩な見どころを担当者がさらに詳しく紹介します。
「プラウド練馬中村橋マークス」は、西武池袋線の中村橋駅徒歩4分の敷地に建つ7階建て、全186戸のマンションです。周辺は商店や住宅が建ち並ぶエリアで、南側は住宅地、東側の一部は商店街に面しています。周囲の建物に比べてかなりのボリュームになるため、なるべく圧迫感を与えない外観や外構のデザインによって、街に潤いをもたらしたいと考えました。
大きな板状の建築になる場合、これまではマリオンという縦方向の部材で分節し、色や素材を変えることで表情に変化をつける手法が主流でしたが、それによって重厚感が増す一面もあります。そこで、ここではあえてマリオンはなくす一方、シンプルすぎて飽きがくるデザインにならないよう、手すりの手前にカーブを描いた白く低い壁のような部分を設けることで、全体を緩やかにテンポよく分節しました。空に溶け込むデザインをイメージし、上層3層分の手すりには、空を映す熱線反射ガラスを使用しています。
正面入口のある南側は建物をセットバックさせ、ボリュームのある植栽帯を設けました。高低差のある樹木や低木、下草をバランスよく配することで、リズムを生み出しています。
また、入口の開口部はそのまま内部までトンネルのように連続しており、中庭の緑が道行く人にも垣間見えます。アールを描いたガラスの壁は夜になるとやわらかく発光し、街を照らします。
さらに、商店街に面した東側の一角には、地域の皆様にとって憩いの場になればと考え、ベンチを配したポケットパークを設けました。階段状の外観は、日影規制という法律上の制限から生まれた形ですが、外観のデザインと相まって、軽やかなイメージに一役買っています。
エントランスホールは木調ルーバーの壁面と天井、石張りの床と壁面に囲まれた2層吹き抜けの大空間です。全面開口からは、中庭とその奥に続く隣家の庭の奥行きある緑と、木造で別棟の共用スペースの建物が眺められます。正面には木漏れ日をイメージしたアートを配しました。
入口の右手には、多様な使い方ができる「ダイバースラウンジ」を設けました。ここはオートロックドアの手前にある風除室からアクセスできるため、来訪者との打ち合わせや、居住者が生徒を招いて英会話教室を行うといった活動にも活用しやすいつくりです。
ダイバースラウンジの近くには、テレワークを想定したプライベートブースを2室完備しています。
エントランスホールの右手奥には、中庭への出入口を兼ねた「グリーンビューラウンジ」も設けました。
木造共用棟へは、中庭に設けた散策路を経由してアプローチします。高さ約4mの常緑樹や落葉樹、低木、下草などを植え込んだ中庭は自然の雑木林のような趣で、四季折々の景色が満喫できます。
中庭の一角には、新たに井戸を掘り、災害時のトイレの排水用など、生活用水の一部として利用できるようにしました。
エントランス脇のダイバースラウンジが「オン」の共用空間だとすれば、木造共用棟「フォレストラウンジ」はいわば「オフ」の空間です。外には広いデッキを設け、一部は腰かけるなどリラックスしやすいように人工芝を張りました。
共用棟は構造材に信州カラマツのLVL(単板積層材)を採用しただけでなく、仕上げ材からテーブルや椅子に至るまで国産木材を用いており、一歩入ると木の香りに包まれます。キッチン、トイレ、洗面所を備え、ホームパーティやイベントなど、お住まいの皆様のコミュニケーションを育む場として活用できます。時とともに風合いが変わるその変化を楽しみ、記憶に残る場所になれば幸いです。
家族構成やライフスタイルが変わっても長く住み続けられる住まいにしたいと考え、専有部のプランにもひと工夫を凝らしました。一部の住戸に、さまざまな間仕切り方ができる可動式のウォールドアとレールを備えることで、9通りの間取りが実現できるシステムを導入したのです。これによって、成長した子どものために個室を用意したり、テレワークのためのスペースを設けたりといった間取りの変更が、リフォームをせずに実現できます。
以上のように、これまでの集合住宅のあり方を徹底して見直した結果、外観、共用部、専有部のそれぞれにおいて、新たな提案を形にすることができました。
今後は居住者の皆様に、成長する中庭の緑や、味わいを増してゆく木造共用棟に愛着を感じつつ、できるだけ長くお住まいいただけることを願っています。
※掲載の情報は、2022年12月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部事業推進二部推進二課 下田 祥
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、自分自身もテレワークが始まったばかりか、臨時休校で家にいる2人の子どもと過ごす日々が続いたことが、今までの集合住宅のあり方を見直すきっかけになりました。自分だったらどんな共用部がほしいか、専有部はどんなプランだと家族が成長しても長く住み続けられるかと、一つ一つ突き詰めて考えたことを結実させたのが「プラウド練馬中村橋マークス」です。今後もお客様や、いちばん身近な住まい手である家族の声に耳を傾けながら、より豊かな暮らしに寄与する建築をつくっていきたいです。