新たな東京の賑わいを生み出す虎ノ門エリアの中心地に誕生した「プラウド新虎通り」。今後発展し続ける街に呼応し、時の変化とともに深まるデザインをコンセプトにつくられたマンションです。外観から内部に至るまで、洗練された美しさをたたえた建築の魅力を担当者が語ります。
目下、国際新都心として大きく変貌を遂げつつある虎ノ門エリア。その中核を成す「新虎通り」は、2014年に開通した環状2号線の地上部(地下は自動車専用の本線)を指し、虎ノ門ヒルズを貫通して虎ノ門と新橋を結んでいます。道路幅は両側の広い歩道を含めて約40mもあり、歩道上にオープンカフェや自転車専用道路を設けるなど、広場のような道自体を賑わいの場として活用する計画が進行中です。
その新虎通り沿いに誕生したのが、18階建て、全75戸を擁する「プラウド新虎通り」です。通り沿いに「にぎわい施設」の設置が求められたため、1・2階に2層吹き抜けの店舗スペースを設けています。これから発展していく街に調和した建築を実現すべく、ホテルや住宅、商業施設など、さまざまな空間の企画・設計から運営までを手がけるUDSにデザイン監修を依頼。あえて一見してマンションとはわからないような、ホテルライクでスタイリッシュなデザインをめざしました。
建物は都心の敷地には珍しく周囲に抜けがあり、3面がよく見えるので、外観はどの面も高いデザイン性と統一感が保てるよう、配慮しました。ガラスの大開口、インナーバルコニー、タイル張りの壁、リブによる横ラインなどをバランスよく組み合わせることで、街の成長を映し出す外観を実現しています。敷地の東側(新虎通りから見て左側)に隣接するビルの外観が非常に個性的なので、その素材感や色合いと調和するよう意識してデザインしたことも、街並みに一体感を出すのに一役買っています。
今回、計画の最初に掲げたのが「時間(とき)とともに生きる」というコンセプトです。時間がたつにつれて美しさや味わいが深まり、成長する街を映し出すような建築にしたいと考えたからで、それが顕著に表れているのが低層部のファサードのデザインです。
まず、新虎通りに面した店舗の入口がある北側の壁面には、マンションには珍しくステンレスを用いました。ステンレスの表面には下から上へ行くにつれて徐々に鏡面からマットになるようなグラデーション加工を施しています。まさに、街の成長を映し出すデザインと言えるでしょう。
一方、マンションのエントランスがある東側のゲートには、時を経た金属のような風合いを持つ塗装を採用。さらに、ゲートの左右の壁は、多種多様な植物を混植し、季節ごとに表情の違いが楽しめるグリーンウォールに仕立てました。ゲートの両脇にはライン照明が仕込まれていて、夜は昼とはまた違った趣が感じられます。
壁面緑化に当たっては、ランドスケープデザイナーと検討を重ね、実際に現場の一角に壁のサンプルをつくって、耐陰性のある丈夫な植物を植え込み、半年以上かけて生育を確認しました。そのうえで、この場所に向く品種を厳選したことが、ボリュームある緑の壁の実現につながっています。
エントランスホールは1階に店舗が入ることもあり、限られた面積ですが、帰宅して一歩入った瞬間、街の喧騒を忘れて心を落ち着け、気持ちが切り替えられるような空間にしたいと考え、五感に訴えるさまざまな仕掛けを盛り込みました。
扉が開くとまず正面に見えるのが、アーティストのオリバー・マースデンによる、自然にインスパイアされたアート。右手にはステンレスのアートが配され、さらに奥のエレベーターホールに進むと、銅、真鍮、コールテン鋼(赤錆色を帯びた耐候性鋼)を用いた4つのアートが出迎えてくれます。いずれも時間の経過によって生まれる「意図できないデザイン」がテーマです。
ホール全体の照明は、サーカディアンリズム(人の体内時計によって調節される1日の周期リズム)が整えられるよう、時間帯によって照度や色温度が変化する仕組み。かすかに流れるBGMは虎ノ門の街並みから着想を得てつくられたオリジナル曲で、時間によって変化します。また、ほのかに香るアロマも、空間の趣に合わせて選んだ「禅」という名の香りです。
外観については、昼だけでなく夜も存在感があり、かつ目立ちすぎないように、照明にも気を配りました。頂部の大庇(おおびさし)は都市の建築らしさを演出するためのデザインの一つで、夜間は屋上に設置したアッパーライトで照らしています。道路の向かい側から見上げて、街に馴染む適度な明るさになるよう、何度も調整しました。
これから新虎通りの開発が進み、賑わいが生まれてくる中で、最初に掲げたコンセプトどおり、時とともに建物の表情が深みを増し、ますます街に浸透してよくなっていくことを願います。
プラウド新虎通り
※掲載の徒歩分数は、 2022年7月時点の「不動産の表示に関する公正競争規約」に沿った表示となります。
※掲載の情報は、2023年2月時点の情報です
※こちらの物件は完売いたしました。
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部事業推進一部推進三課 白井 真理子
これまでも都心の物件に携わってきましたが、最近は街全体における建築のあり方について、より重点を置いて検討するよう心がけています。完成した「プラウド新虎通り」を見たときは、当初構想していたように、街に溶け込むデザインを実現できたと感じました。特に道路幅が広い新虎通りに面した住戸は、ガラス面を中心としたデザインとしたことで予想以上の開放感があり、内覧会でも多くのお客様にご満足いただいたことも、うれしかったです。今後も街全体における建築のあり方を意識しながら、与えられた仕事に精いっぱい取り組んでいきます。