桜の名所として知られる呑川本流緑道沿いに続く閑静な住宅街の一角に誕生した「プラウド都立大学」は、5階建て135邸の低層レジデンスです。緑道の緑と空の広がりが享受できる豊かな環境を生かし、家族とゆったり過ごせる住まいをめざして計画した建築の魅力を担当者が語ります。
「プラウド都立大学」は東急東横線の都立大学駅から徒歩10分、東急目黒線・大井町線の大岡山駅から徒歩11分の閑静な住宅街の一角にあり、桜の名所として知られる緑豊かな呑川本流緑道に面しています。しかも、緑道を挟んだ向かい側は第一種低層住居専用地域で、のびやかな空の広がりが感じられます。
このかけがえのない立地を最大限に生かすことが、今回のプロジェクトの最大のテーマでした。敷地は南北に長く、5000㎡を超える広さがあるため、できるだけ緑道に面した西向きの住戸を多く確保した配棟を考えました。
西側の外観は戸境のマリオン(縦の部材)を千鳥状にリズミカルに配置することで、長大なボリュームを軽減しています。また、川沿いで浸水対策が必要なことから1階は構造体の壁で囲ったタイル張り、2階はタイル張り+ガラス手すりにする一方、3〜5階は緑道の緑が享受でき、向かいの住宅や道行く人の視線を遮る熱板反射ガラスを採用しました。
緑道に面した敷地の中ほどには、以前、東京電力の鉄塔が建っていたスペースがあるため、ここには建物は建てず緑地帯として残すことで、全体のボリュームを二つに分節したことも、圧迫感の軽減につながっています。緑地帯に面した部分にラウンジを設けたので、内部からも緑が楽しめます。
緑道側からの眺めを意識し、バルコニーに統一感のあるプランターを設置し、植栽の植え込みまで行ったことは今回のチャレンジの一つです。継続して育てる、別の植物に植え替えるなど、今後のメンテナンスはお客様に任されていますが、この緑豊かな環境にお住まいになったことをきっかけに、街の緑化に一役買う楽しみを見出していただければ幸いです。
建物が南北に長いことから、エントランスは都立大学駅寄りの北側と、大岡山駅寄りの南側の端に2カ所設けました。北側のノースエントランスは2層吹き抜けにすることで高さを出し、L字型の庇によって建物の品格を演出しています。
エントランスホールは高さのある天井を生かし、天井に段差をつけて間接照明を仕込み、奥行き感を演出しました。光源に採用した有機EL照明は面全体で光るため、やわらかな光が全体に広がり、上質で居心地のよい空間を生み出しています。
サウスエントランスはノースエントランスとは趣を変え、両側に植栽帯を設けることで横に広がりを持たせ、さらに奧に引き込むようなアプローチに仕立てました。
南北に長い建物の東側には長さ100m以上にも及ぶ共用廊下が続きます。この廊下をいかに単調なものにしないかも、今回の計画の大きなテーマでした。そこで、1階は廊下の中ほどに共用施設を設け、二つのエントランスから共用施設に至る通路をあえて迂回させ、日の光や外気を感じ、庭の緑を眺めながら散策が楽しめる「テラスコリドー」を設けました。ガラス屋根付きなので、雨の日も心配ありません。
リラクシングラウンジと名づけられた中央の共用施設は、キッチンを備えたダイニングと、ソファのあるリビングが一体になった広々したスペースで、窓からは中庭の緑が眺められます。
キッチン脇にはプレイスペースもあり、遊ぶお子さまたちの様子を見ながら、大人はダイニングでお茶や軽食を楽しむといった使い方ができます。
また、ラウンジに隣接して、ワーキングブースも3室用意しました。壁面の間接照明やデスクスタンドにも、目に優しく影が出にくい有機EL照明を採用しています。
エレベーターホールの壁面には、フロアごとに異なるアートを配しました。目黒区のシンボル(木・花・鳥)であるシイ、ハギ、シジュウカラと、ノースエントランスとサウスエントランスのシンボルツリー、ヤマモミジとシラカシをモチーフに構成したもので、写真はハギをモチーフにした1階のアートです。
2階以上の共用廊下もディテールに工夫を凝らしました。2階と3階は敷地に隣接して住宅が建つだけでなく、共用廊下を挟んだすぐ向かい側にも住戸があるため、廊下を歩く人の視線に配慮して、ランダムなピッチで木調ルーバーを設置しました。
一方、4階と5階は近くに高い建物もなく視界が抜けるため、ルーバーはなくし、手すりもデザインフィルムを貼ったガラス製で、なおかつ照明を内蔵したタイプを採用しました。夜は手すりの間接照明が床面を照らし出し、昼間とは違った表情を見せてくれます。
以上のように、恵まれた周辺環境を最大限に生かし、外観から共用部、専有部に至るまで、豊かな自然と一体感のあるデザインをめざしてつくり上げたのが「プラウド都立大学」です。お住まいの皆様がここで家族と過ごす時間が、より充実したものになることを願っています。
※掲載の情報は、2024年10月時点の情報です
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部事業推進一部推進三課 服部華於梨
「プラウド都立大学」の敷地には以前も大規模なマンションが建っていて、土地の取得や解体も含めて当社が行ったため、計画から完成までに約4年の歳月を要しました。その間にコロナ禍によって世の中が大きく変わり、共用部の在り方を考えるきっかけになりました。マンション内で豊かな生活が送れるよう、すみずみまで配慮したつもりですので、愛着をもってできるだけ長くお住まいいただけたらうれしいです。