「プラウド参宮橋」は国産木材を積極的に使用した全19邸のプライベートレジデンス。構造と意匠の両方に木を生かしつつ、先進的なデザインを実現しています。木を取り入れることで建築に備わった数々の魅力について、担当者が解説します。
明治神宮の杜への入口にある小田急線参宮橋駅は2020年、国産木材を活用した駅舎に改築されました。「プラウド参宮橋」の敷地はそんな駅から徒歩3分でありながら、高台の緑豊かな住環境に位置しています。こうした立地の親和性もあることから、これまで野村不動産が積極的に進めてきたマンションへの国産木材活用の取り組みをさらに前進させ、木質化の推進力と技術力を兼ね備えた大成建設とタッグを組んで、木をふんだんに生かした建築をめざすことになりました。
写真は駅に近い南東側外観で、右端にメインエントランスがあります。木を多用すると、ともすれば和の趣に傾きがちですが、ここではガラスのサッシや金属を組み合わせ、シンプルでスタイリッシュな外観を心がけました。
4階建ての建物は、3階までがRC(鉄筋コンクリート)造、最上階はコア部分を除き、CLT(繊維方向を交差させた板を積層・接着した集成板)と鉄骨のハイブリッド構造を採用。屋上に突き出した象徴的な三角屋根は、意匠だけでなく構造にも寄与しています。最上階の木質化により、鉄筋コンクリートに比べて建物全体の軽量化が図れるため、3階以下はTWFS構造(厚肉床壁構造)という柱・梁の凹凸の少ない構造とすることができ、住戸内をすっきりとした空間にすることができました。
CLTを用いた三角屋根の内部は最上階の住戸内のトップライトとして生かしており、空間に木の温かみをもたらしています。また、各住戸のバルコニーの天井にあたる軒裏部分にも国産ヒノキ材を張りました。
敷地は三方が道路に面する角地で、車でのアクセスは北西側が便利なことや、メインエントランスのアプローチが階段であることを考慮し、北西側にも道路から地続きで出入り可能なエントランスを設けています。正面の南東側だけでなく、北西側や北東側のファサード、エントランスや地下駐車場の入口に至るまで、完成度の高さを追求し、建築の品格を表現しました。
駅から最も近い南東の角に配置したメインエントランスは、下り階段でアプローチします。左手には国産ヒノキ材の格子を、正面にはアイキャッチとなるよう、大判セラミックタイルと金属バーを組み合わせた意匠壁を配しました。
階段の突き当たりにある風除室には、国産ヒノキ材を用いたアートを配置しました。一歩足を踏み入れると、ヒノキの香りが漂います。アートの一部には実際に構造材として用いたCLTの端材も活用しています。
風除室の奧にはエントランスホールが続きます。格子壁に配したアートは、植物の芽吹きを表現したものです。
共用スペースにも木がふんだんに用いられています。共用廊下の一角に設けたラウンジは三方を木の壁に囲まれたスペースで、温かな雰囲気が感じられます。
エレベーターホールの壁面は全面を板張りにはせず、メンテナンス性も考慮し、腰壁部分は黒いシート貼りとしました。コーナー部分も長く美しさが保たれるよう、金物を設置し、デザインと機能を両立させています。
各階のエレベーターホール脇にも木の格子壁を設けました。ここでも、壁面のコーナー部分にはデザインと機能を兼ね、木調のシートを貼って保護しています。
全住戸の玄関には国産木材を用いたアクセントウォールを設置しました。写真は建物の完成前に仕様や設備などを確認できる「コンセプトルーム」に設置されたアクセントウォールの見本です。この他、フローリングやドアなどの建具にも突板を使用しています。国産木材の活用は森を育むことにつながるだけでなく、CO2を木の中に固定することにより、CO2排出量の削減にもつながります。
随所に木の質感が感じられるだけでなく、CLTの構造体を生かした三角屋根部分が印象的な「プラウド参宮橋」が、今後、街のシンボルとして長く地元の人々に愛される建築になることを願います。
※掲載の情報は、2025年1月時点の情報です
インタビュー
野村不動産 住宅事業本部事業推進一部推進一課 松田幸恵
「プラウド参宮橋」のプロジェクトの途中で産育休を取得しました。長い時間、自宅で過ごし、小さな子どもとの生活を送る中で、ちょっと子どもを待たせたり荷物を置いたりできるスペースがほしい、もっと自転車が停めやすい駐輪場になるといいといった、生活者として「こうあったらいいな」と思うことが多々ありました。このような経験の一部を本プロジェクトにも生かすことができたと思います。今後もそうした生活者の立場に立った設計を大切にしていきたいです。