グッドデザイン賞受賞レポートプラウドシティ大田六郷
マンションライブラリー【前編】

マンションの専有部の外にありながら毎日のように目に触れて、
自然に本に手が伸びる大田六郷のマンションライブラリー。
「図書館に暮らす」を実現する、ライブラリーの今をご紹介します。

1 ライブラリーの今

暮らしを豊かにする
本から生まれるコミュニティ

マンション内に約7000冊もの
蔵書を揃え
「図書館に暮らす」をカタチに

総戸数632戸という大規模マンションならではの多彩な共用施設内至る所に、複数の本棚を設置した「プラウドシティ大田六郷」のマンションライブラリー。その蔵書の総数は、なんと約7000冊! 小規模の地方図書館とほぼ同規模というスケールです。

フォレストカフェ
スタディスペース

選書は地域のリサーチから始まり、居住者にとって身近な場所になる多摩川に関連する本や、大田区の街歩きに役立つ本など、地域に根ざした本を多数ピックアップ。子育て世代が多いことから、家族のお出かけに役立つガイドブックとともに、エントランスの脇にあるラウンジとカフェスペースに並べています。
また、キッズスペースには子どもが大好きな名作絵本を、その近くのホールには育児書とともに暮らしにまつわる本をレイアウト。個室のように仕切られたスタディスペースにはビジネス書をといったように、場に合わせた本を配置し、自然に本と触れ合える環境を築いています。

2階ホールの本棚

ライブラリーで過ごす
上質な時間が暮らしの一部に

蔵書だけでなくしつらえも含めて、コミュニティが生まれる場を目指したのが、このライブラリーです。メインとなるフォレストライブラリーは、専有部の面積より広い約110㎡を有するゆったりとした空間。大きな本棚に囲まれるようにソファとひとり掛けの椅子が置かれ、くつろぎの時間を提供しています。文芸書を手に、その場で腰を据えてじっくりと読書を楽しむ人、ライブラリーの奥に設けられたスタディコーナーで勉強に勤しむ人、買い物帰りに立ち寄ってさっと本を借りる人……利用の仕方もさまざまに、本との出会いを楽しんでいます。

フォレストライブラリー
キッズスペース

フォレストライブラリーに併設されたキッズスペースでは、子どもを遊ばせながら育児書をめくるお母さんや、一緒にポップアップ絵本を眺める親子の姿も日常的になりました。子どもを介して大人が知り合い、また手に取った絵本が会話のきっかけになるなど、ライブラリー内で居住者をつなぐ小さなコミュニケーションも生まれています。

2 デザインコンセプト

住民とともに成長する
マンションライブラリーを実現

デベロッパー×本の二次流通業者×書店
三社の強みを生かした理想のライブラリー

圧倒的な蔵書数の実現は、長期的な視点で人々の暮らしを考えた住まいや街づくりを担う「野村不動産」と、中古書籍のネット通販の最大手である「ブックオフオンライン」、そしてブックコンサルティング事業に力を注ぐ「青山ブックセンター」という、三社の連携があってこそ。本の選書と手配をブックオフオンラインと青山ブックセンターが協働し、7割以上を中古書籍で調達することで設定された予算を最大限に活用し、約7000冊もの蔵書を確保しました。
さらにライブラリーの設置、運用にとどまらず、新しい蔵書を定期的に追加し、住民の好みやライフスタイルの変化にも適合していく時間的推移までデザインしています。そんな「成長するライブラリー」という新しいモデルが高く評価され、2017年度グッドデザイン賞を受賞。居住者もその価値を意識しており、大切な場所として育まれています。

三社の役割

  • 野村不動産 野村不動産パートナーズ

    野村不動産
    野村不動産パートナーズ

    632戸の大規模マンション内に、「図書館に暮らす夢」を実現するライブラリーを計画。入居後は管理業務を担う野村不動産パートナーズがマンションライフをサポートしながら、ライブラリーに関する居住者からの声を青山ブックセンターに届けるなど、橋渡し的な役割も担う。

  • ブックオフオンライン

    ブックオフオンライン

    蔵書として選書された本を、ブックオフオンラインが誇る中古書籍の豊富な在庫からピックアップ。初期蔵書の7割以上を中古書籍で調達。入居後は、これから始まるリユース部分を担当。定期的な本の入れ替える時や本専有部で不要になった本を買い取り、新しい蔵書の資金に変える予定。

  • 青山ブックセンター

    青山ブックセンター

    ブックコンサルティングの豊富な実績を生かし、本当に使える蔵書を地域のリサーチから得たデータと居住者のライフスタイルをもとに選書・レイアウト。入居後は新しい蔵書の選書、ライブラリーのメンテナンス、貸出履歴の管理などランニング業務全般を手掛け、生きた本棚を支える。

シンプルな貸出システムと
きめ細やかなメンテナンスで
利用しやすい環境を維持

ライブラリーに揃えた豊かな蔵書を、気軽に手に取って読んでもらうためには、利用しやすい環境をつくることが大切です。そこで、貸出と返却はバーコードをリーダーに読み込むだけのシンプルなシステムを採用。専用アプリに登録すれば貸出状況の確認や予約も可能です。常駐のスタッフは置かず、本を借りて棚に戻すまでを居住者に任せることでコストもかからず、そのぶんをメンテナンス費や新しい蔵書の費用にあてることができます。

バーコードを読み取るだけの貸出システム。
3ヵ月に一度のメンテナンスで、利用したくなる快適空間に。

メンテナンスは青山ブックセンターに委託して細やかに。3ヵ月に一度、専任のスタッフが訪れ、棚の整理から、貸出できなくなっている本を再登録する作業、そして掃除まで、全ての棚を美しく整えてくれます。ライブラリー内の快適さが保たれることで利用しやすくなり、またきれいに使いたくなるような、相乗効果も期待できるのです。

利用者からの評判も上々です

入居が始まった2017年の3月から現在までの本の貸出冊数は、平均1日10冊、毎月300冊前後と好評です。実際に利用している居住者から、喜びの声も寄せられています。

すでに何冊も借りています。家に帰ってゆっくり読めるのがいいですね。(30代男性)

気になっていた料理本があったので、すぐに借りました。借りるにも返すのも楽です。(30代女性)

1日8時間程度、ライブラリーを資格試験の勉強に活用しています。(30代女性)

子供の絵本は好き嫌いがはっきりしているので、買う前に確かめられてうれしいです。(20代ファミリー)

読みたいと思っていたけれど、タイトルを忘れてしまった本と再会できました!(40代女性)

居住者が利用したくなるライブラリーには、魅力的な蔵書を生む生きた本棚があり、居住者とともに成長し続けています。後編では、そんなライブラリーを支える独自のシステムをご紹介します。

<グッドデザイン賞とは>

グッドデザイン賞は、さまざまに展開される事象の中から「よいデザイン」を選び、顕彰することを通じ、私たちの暮らし、産業、そして社会全体を、より豊かなものへと導くことを目的とした公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」です。グッドデザイン賞を受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められます。「Gマーク」は創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として、その役割を果たし続けています。

受賞作品一覧はこちら

大田六郷マンションライブラリー 【後編】 >

※掲載の情報は、2024年3月時点の情報です