グッドデザイン賞受賞レポートOSEKKAI」プロジェクト〜マンションはもっと暮らしを楽しくできる〜

「モノからコトへ」。
価値観が大きく変化する時代にあって、「豊かな暮らし」とは、小さくても居心地のいい場所や、なくてもいいけれどあるとうれしいちょっとした贅沢。
暮らしの中で笑顔になれる、そんなちょっとした幸せなシーンを生み出すためのアイデアを集めたのが「OSEKKAI」プロジェクトです。
マンション共用部が楽しく自慢になるアイデアをご紹介します。

1 「OSEKKAI」って何?

人の心を動かす
+αのちょっとOSEKKAIなアイデア

「ゴミ置き場で近所の方と立ち話ができますか?」
こんな質問をされたら、ほとんどの回答は「NO」でしょう。
実は、ゴミ置き場はマンション内で気軽にコミュニケーションがはかれるスポットのひとつでもありますが、従来のゴミ置き場は、そこに長く留まりたいとは思えない場所です。
そもそも、ゴミ置き場や共用トイレといったマンションの共用部分は、機能面が重視され、そこに「居心地がいい」や「見た目がきれい」といった価値は考慮されてこなかったのです。
そこに+αの価値を加えようと考えたのが、OSEKKAIプロジェクトです。

上図のように、壁紙に明るい色の防汚シートを貼ると、ゴミ置き場全体の雰囲気が明るくなります。そうなると「キレイに使って美しく!」という意識も自然に生まれてゴミ捨てマナーにもつながり、その結果、コミュニケーションが生まれる場としても機能し始めるのではという考えから生まれました。

「汚い、暗い」イメージのゴミ置き場も、防汚塗装をしてテーマのある明るいデザイン壁に。子どもにも分かりやすい楽しい分別サインは可動式のアイデア。住む人のゴミの量によって場所を移動させることも可能なので、キレイに使うことができます。さらに、子どもたちのお手伝いの機会や、さまざまなシーンでの住民同士のコミュニティを生み出します。

一方、殺風景な共用トイレに対する一工夫が、下のイラストです。

壁面に汚れにくいシートやパネルを貼り、イラストを施して、物件ごとに「遊び心」と「便利」が共存するデザインにしました。

絵本の世界をテーマにしたイラストが壁面全体を飾ったのが左の施工例。英語による小鳥やバンビの吹き出しを題材に、子どもとの会話も広がりそうです。
右の施工例では、荷物を下に置きたくないという要望に応えたデザインフックと、身支度が調えられるよう小さなミラーをつけました。愛着がわくような空間にすることで、きれいに使いたいという気持ちが自然に生まれます。

必要十分な機能性だけを追求していたマンション共用部が、今、OSEKKAIプロジェクトによって大きく変化し始めています。

2 “あったらうれしい”をカタチに

プラウドシティ東雲キャナルマークスに
採用予定のOSEKKAIアイデア

建設計画の段階から、OSEKKAIアイデアの採用が進んでいた「プラウドシティ東雲キャナルマークス」が、2020年3月に竣工予定。そこでの最新の採用例は……。

ゴミ置き場

ゴミ置き場には波のイラストを。分別のサインボードがわりにイラストを利用し、「大きなカモメの絵の下に置いてきてね」と子どもに頼むこともできます。

共用トイレ

キッズルーム横は明るいターコイズ(左)、エントランス横はシックな色合い(右)と、それぞれのスペースに合わせたイメージに。どちらにも荷物用と傘用のフックが取り付けられ、腰壁部分は、汚れが付いても掃除しやすい防汚木調パネルが設置されています。

消火器置き場

消火器の置き場に施されたイラストも、海に近いマンションならではのデザイン。見た目に楽しい消火器置き場は、自然と笑顔になり、コミュニケーションのきっかけにもなります。また、消火器の場所を記憶してもらい、いざという時に備える安全・防災のメッセージサインにもなります。

エレベーターホール

身だしなみを整えるミラーを取り付けました。エレベーターを待つ間のちょっとした気遣いとともに、防犯の役目も果たしてくれます。

さてここで、OSEKKAIについて、あらためてご説明しましょう。 OSEKKAIとは、“絶対に必要なものではないかもしれないけれど、あったらちょっとうれしい、ちょっと元気になる”というアイデアや工夫のこと。“こんなものがマンションにあったら、暮らしがちょっと楽しくなる”というデザインの提案から始まりました。アイデアの源泉は、「笑顔になる」「カラダにいい」「コミュニケーションが生まれる」の3つのテーマ。プラウドのマンション共用部にはすでにさまざまなシーンで取り入れられています。

※プラウドシティ東雲キャナルマークスの外観CG、共用部採用例のイラストイメージは実際とは異なります。今後変更になる可能性があります。

3 感性の価値観をプラス

くすっと笑顔になる瞬間。
そんな暮らしのシーンを増やしていきたい

マンションのOSEKKAIアイデアは他にもいっぱい。たとえば……。

ポストの横には身長計ステッカー、消費カロリーの目安が描かれた共用階段は、上り下りが楽しくなり、運動不足解消にも。

かわいいサインが目印の駐輪場は、エリアごとに色分けを。自分の自転車の場所を覚えやすく、ミニサイクル型の車止めもアクセントに。また、駐輪場の床にカラータイルを埋め込んで目印に。

中庭の“ケンケンパ”ができる遊び心一杯の敷石では、バランス感覚や体幹を養えるかも。また、小鳥のための巣箱は、マンション内で楽しい発見ができるように。いきいきと遊ぶ子どもたちの姿が目に見えるようです。

※写真は全て参考写真です。

ガラス面衝突予防のサインには、ブタの鼻や楽しい顔ハメイラストを。家族の撮影スポットとしても人気が出そうです。

今までのマンションでは、「~が必要」や「ここは~すべき」という課題解決の発想でほとんどのデザインが決まってきました。そこに「何かが抜けてはいないか?」という疑問が浮かび、約2,000人の生活者へのアンケートを実行。その結果をもとに生まれたのが、OSEKKAIという発想です。OSEKKAIは、かわいい、明るい、楽しい……といった「感性価値創造型」の商品を創り出すことを目的としています。

今後もOSEKKAIアイデアを様々なマンションに取り入れていくために、アイデアブックを更新。マンション建設の企画段階から人々が笑顔で暮らすシーンを想像し、マンションの立地や特徴に合わせた楽しいデザインを日々考えています。

日々の暮らしの中では、必ずしも数値化されないものの中に大切な価値が潜んでいます。暮らしとは、人の心をちょっと温かくしてくれる豊かな時間をできるだけたくさん積み重ねていくこと、それはマンションへの愛情にもつながるはず――そんな思いを形にしたのが、OSEKKAIなのです。

<グッドデザイン賞とは>

グッドデザイン賞は、さまざまに展開される事象の中から「よいデザイン」を選び、顕彰することを通じ、私たちの暮らし、産業、そして社会全体を、より豊かなものへと導くことを目的とした公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「総合的なデザインの推奨制度」です。グッドデザイン賞を受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められます。「Gマーク」は創設以来半世紀以上にわたり、「よいデザイン」の指標として、その役割を果たし続けています。

受賞作品一覧はこちら

※掲載の情報は、2019年12月時点の情報です