田園都市線で「渋谷」駅へ13分、大井町線で「自由が丘」駅へ6分の「二子玉川」駅。この駅を中心に広がる「二子玉川」の街は、さまざまなランキング企画で上位にランクされている「住みたい街」。ではなぜこれほどまでに人気なのでしょうか。この街を歩き、人気の理由を探ります。
「二子玉川」の街は大まかに西口エリアと東口エリアの二つに分けることができます。まずは西口エリアを歩きます。
駅を出ると目の前にそびえているのが「玉川髙島屋S・C」。日本初の本格的郊外型ショッピングセンター」といわれるこの施設は、1969年の開業以来、「二子玉川」の街の「洗練」「上質」イメージを牽引してきました。屋上に本格的な庭園を設置したり、本館ファサードの改修と別館の「マロニエコート」の設計に隈研吾氏を起用したりと進化を続け、その存在感は今も増すばかりです。
そんな「玉川髙島屋S・C」から少し歩くと「二子玉川商店街」。地元の人たちに長く愛されている店と新感覚の店が仲良く軒を並べるここは、親しみやすさとこだわりの感覚が調和した商店街です。
街と緑の調和をめざし1969年の開業から屋上緑化に取り組んでいる「玉川高島屋S・C」。個性を持った屋上庭園は安らぎと憩いの空間になっている
「入山十百花店」。切り花の購入から、インテリアグリーンや造園の相談まで対応。カフェだけでも利用できる
個人商店レベルでみても、上質な暮らしを支える店は、すでにこの街のあちらこちらに生まれています。花とガーデニングのプロであるご夫妻が開店した「入山十百花店」は、ご主人手作りの焼き菓子とコーヒーも人気。ワークショップも開催しています。「BLUE POPPY Bakery」はフランスの上質なパン作りとニューヨーク流の気軽さがミックスした、ありそうでなかった店。「CHICHICAFE」は、窓に多摩川の景観が広がるロケーションの良さに胡座をかかない上質な料理を提供しています。
グランメゾン「ジョエル・ロブション」の元ブランジュリー統括シェフが始めた、日常に潤いをもたらす花のような「街のパン屋さん」
東口エリアは再開発によって一新されたエリアです。駅直結の複合商業施設「二子玉川ライズ」には、トレンドのファッションの店はもちろん、ライフスタイルを切り口に家電製品を紹介する「二子玉川 蔦屋家電」や、シネマコンプレックス「109シネマズ」もあり、マルシェなどのイベントが開催されています。モノに限らず文化やコトも提供し、にぎわいを創出する「二子玉川ライズ」は、これからの上質な暮らしに欠かせない場所といえます。
「二子玉川」の街を商業施設からみてきましたが、この街を大きく特徴づけているのは「多摩川」の存在です。スポーツ、散策、子どもと一緒になど日常的に楽しめ、また「世田谷区たまがわ花火大会」などのイベントでは大いににぎわっています。
「洗練」「親しみ」「こだわり」「将来性」、さらに「自然のうるおい」まで備えた「二子玉川」の街が人気なのは当然。これからもこの街は「住みたい街」であり続けるでしょう。
個性的な店がいくつも揃っている「二子玉川」の街。散歩の途中で、用事の間に、自分好みの店がふと見つかる。それはこの街に住む人ならではの喜びです。中には世界中探してもこの街にしかない店も。「玉川髙島屋S・C」の裏手にある「BOX & NEEDLE」はまさにそんな店。世界初の貼箱専門店です。
「『BOX & NEEDLE』は、京都で100年続く貼箱の工房が運営しているお店です。陶器屋さんや和菓子屋さんでちょっとしたお買い物をすると、紙でできた箱に入れてくれますよね。それが貼箱です。中身を守り、品物を引き立て、贈り手の気持ちを伝えてくれるものなのに、中身を出したら捨てられてしまう。丈夫で長持ちするのにそれではもったいないということで、貼箱自体が商品になる店をと始めたのがこの店です」
そう説明してくれたのは「BOX & NEEDLE」二子玉川店店長の土井美代さん。店のこと、貼箱のこと、紙のこと、何でもご存知のベテランです。「BOX & NEEDLE」は「羅針盤」という意味で、「贈り物をするときの道しるべ」になることを願って店名にしたそうですが、土井さんはさしづめ生きている羅針盤。ところ狭しと並んでいる貼箱のどれを買おうかと迷ってしまう私たちの良きアドバイザーになってくれます。
「BOX & NEEDLE」二子玉川店店長の土井美代さんは行動の人。5月に開催した堀川波さんのワークショップは自らコンタクトして実現させた
「貼箱は80種類くらいあります。ギフトボックス、ミニドレッサー、ジュエリーボックス、小物整理箱、かわいい紙製のトランクもあります。額装して壁に飾るなど、インテリアの小道具としての提案もしています」
貼箱は、作って楽しく、使って便利。愛着も持てる。「壊れたら紙を貼って補修できますし、最後の最後は燃やすゴミに出せます。エコなんですよ」と土井さん
色柄は百花繚乱。パステルカラーにシックなトーン、ポップな柄もの、ぐっと落ちついたもの。しかし一つとして同じものはありません。手作業で作られるため、柄の出方が一つひとつ違うからです。貼箱を彩る紙は単体でも買うことができます。種類は常にお店にあるものだけでも300以上。京都の友禅和紙の工房に特注しているオリジナルペーパーには、本田このみさんやいのうえ彩さんといった作家さんとコラボしたものもあります。イタリアや北欧の紙、インドやネパールの手すき紙など、海外製の紙の品揃えも豊富です。
ワークショップも開催しています。簡単にできるシンプルなトレイから凝った箱まで。色も柄もたくさん用意された紙から選び、ニカワという糊を使って組み立てます。どれも2〜3時間でできるそうです。
ワークショップの様子。貼箱作りだけではなく、近年はオリジナルペーパー作りや金継ぎなど、ジャンルを広げて開催している
「作るプロセスを体験していただけば貼箱の魅力をもっと深く知っていただけるのではないかと考えて始めました。もう10年以上になりますね。毎月10回ほど開催し、新メニューをどんどん考案しているので、ワークショップのメニューは100種類以上あります」
「BOX & NEEDLE」の将来の目標は、貼箱作りの先生を認定する仕組みを作ること。貼箱作りの楽しさを世界に広げ、雇用の創出にもなる計画だ
土井さんによると、世界的なペーパーレスの流れの中で、いま、紙に関わる産業は危機的状況にあるそうです。長年刷られてきた人気の柄が急に廃盤になったり、昔ながらの紙雑貨を取り扱うお店が廃業したり。「紙がなくならないでほしい。紙をみんなにもっと使ってほしい。そういう想いで活動しています」と話す土井さん。
紙産業の危機を声高に叫ぶのではなく、カラフルでかわいい貼箱を世に出すこと、ワークショップで魅力を伝えることを通じて発信している「BOX & NEEDLE」。その想いは、「二子玉川商店街」のカフェ「Let It Be Coffee」にギフトボックスの制作を依頼されるなど、地元の人たちにも広がっています。「BOX & NEEDLE」の活動は、都会的なセンスと豊かな自然のバランスが心地よい街「二子玉川」だからこそ光るのかもしれません。
協力:BOX & NEEDL
※掲載の情報は、2023年12月時点の情報です