東北の玄関口・仙台。中でも近年、商業地、住宅地の両面において熱い注目を集めているのが仙台駅を基点に広がる“中心部”。地価も毎年上昇を続けている仙台の中心部がこれからどうなっていくのか、またそこに住まうことにより享受できるメリットなどを仙台の不動産事業に詳しい、不動産のエキスパート・佐々木 篤さんに聞く。
株式会社シーカーズプランニング
代表取締役 佐々木 篤 氏
PROFILE
宅地建物取引士。昭和59年から宮城県、首都圏などで住宅情報事業に携わり、現在は住宅不動産事業者向け市場レポート、講演、企画、コンサルティングなどを多数行っている。
仙台市の人口は現在、約109万人。この約50年間の間に人口が2倍へと成長を遂げています。東北6県の県庁所在地の人口は各市平均30万人前後のため、3倍以上の規模。まさに仙台は東北の中核都市であり、札幌、広島、福岡とともに「地方中枢都市」と言われる所以を裏付けるものとなっています。
仙台市の住宅の歴史では街の成長と時を同じくして昭和40年代に郊外の大型住宅地の開発が活発化し、戸建住宅が盛んに建設されました。同時に、仙台市中心部においては分譲マンションが登場し、仙台市中心部を皮切りに徐々に郊外での建設が増え、今まで分譲されたマンションは累計で8万戸以上になっています。ご購入される方の層としては地元の方はもちろん、転勤で仙台に住まわれた方が仙台の街の美しさと利便性などの住み心地のよさを実感され、東京圏と比べた時の物件価格の求めやすさに惹かれて購入するケースが多いようです。
また、仙台エリアでは近隣市外からの流入も増加しており、市内の郊外エリアからの中心部への住み替えなども目立ち、都心回帰傾向が強くなっています。
住宅開発は、人口増加と用地不足の問題から長年に渡り、郊外に延びる形で開発が行われてきました。
近年は成熟社会の到来とともに中心部や近郊エリアでの住宅建設や中心部の大型開発案件が増えています。
2015年に地下鉄東西線が開業し、仙台市南北線と合わせて交通インフラの整備が進められたことに加え、東北大学農学部跡地や、仙台市立病院跡地などの中心部の再開発が活発化、さらには「せんだい都心再構築プロジェクト」が動き出し、東日本大震災以降から加速する仙台市への人口集中、中でも中心部への人の流れがさらに進む動きとなっています。
そうした都心回帰での多くの案件に共通する開発コンセプトは、ショッピングや病院など日常生活に必要な施設が徒歩圏内にあることに加えて、職場、趣味などの活動にも近いこと、そして健康寿命を長く保つための施設があることなどが挙げられます。 “人生100年時代”が到来すると言われている今、購入時のライフスタイルにあった利便性はもちろん、長年住まう中で充実したシニアライフが過ごせることもより重視される傾向にあります。
それは高齢化および人口減少社会の到来が現実のものとなりつつあり、これからの時代にふさわしい“街の形づくり”が進められている流れにあるという見方もできます。
今年3月に発表された2020年1月時点の公示地価によると、札幌、仙台、広島、福岡の地方4市の上昇率はここ数年間、上昇拡大を続けており、今年は住宅地5.9%アップ、商業地11.3%アップと東京圏などより高い上昇率となっています。
地価調査の専門家からも地方4市の近隣エリアから人口が集まることによる将来性への期待の高さを指摘する声が多く聞かれます。仙台市内の人口の増加エリアと地価上昇率の高いエリアを照合すると、ほぼ同じエリアとなっています。人口がどこに集まるかが、今後も地価動向の重要な鍵となるでしょう。
次に、宮城県内の今年の公示地価を見てみると、仙台市および周辺市町村がけん引し、住宅地は全国2位の上昇率となりましたが、仙台市の中では住宅地、商業地ともに中心部の再開発が進む青葉区が最も高い上昇率となっています。その中でも上昇率の上位には中心部の利便性のよい地点が並ぶ形となっています。また、実際の取引動向においては、同じエリア内でも道路付けのよさや住環境のよさなど、より条件のよい地点ほど高く取引されており、エリア内でも価格差が拡大傾向にあります。
全国・3大都市圏・地方4市・地方その他の
平均変動率 (2014~2020年)
宮城県公示地価〈価格順位表ベスト10〉
[国土交通省/令和2年地価公示データより
株式会社シーカーズプランニング作成]
そうした観点から、仙台エリアのマンション市場を分析すると、仙台市役所、宮城県庁など官庁街に隣接する商業地や住宅地は、古くから栄える仙台市中心部のマンション開発をはじめ、東北大学農学部跡地の開発も予定されていることから、中心部における将来の“街の形”をつくるという意味でも非常に注目される存在であると言えるでしょう。
ベストなご購入のタイミングは個人のライフサイクルによっても大きく異なる問題ですが、ご購入にあたっては制度や金利なども考慮したうえで決めることが重要です。今、首都圏など大都市部でご購入される方の多くが重視されるポイントとしては、将来の「資産性」と今の「低金利」「税制優遇」。金利面については、低金利水準が続いていることはやはり大きなメリットと言えます。加えて、10年間で最大400万円、ローン残高の1%が所得税から控除される大型の「住宅ローン控除」さらには「すまい給付金」などにより実質的な金利負担分などが控除される、現在の取得支援制度の充実を挙げる方が多くなっています。
前述してきたとおり、さらなる街の変貌が期待される仙台市中心部。こうした機会を逃さぬよう、自分たちのライフスタイルやお住まいを一考されてみてはいかがでしょうか。