ここ宮城県には、郷土に根付いて匠の精神と技を受け継ぎ、新たな価値を生み出す「モノづくり」の職人の方々がたくさんいます。
そんな名匠たちを野村不動産グループカスタマークラブの方々とともに訪ね、秘めたる想いや魂に触れながら学ぶプロジェクトをスタートしました。
その第一弾となったのは、仙台市・秋保にある「海馬ガラス工房」のガラス作家・村山耕二さん。
流麗な曲線を描くガラスアートの世界を体感し、その感動を伝えていきます。
真夏の日差しが目映い8月1日、35名の参加者が仙台市・秋保の「海馬ガラス工房」を訪問。ガラス作家の村山耕二さんが出迎えてくれました。まずは、豊かな緑が取り囲む工房の前庭で、自身が手がけるガラスアートについて紹介。日本のみならず世界各地を巡って砂を採取し、それぞれ成分の違いによって独自の色合いを持つガラスの作品を生み出していることを教えてくれました。
モロッコ・エルフードに滞在して得たサハラ砂漠の砂について、「赤い砂漠の砂が、溶解炉で溶かされて冷え固まると、深い緑色のガラスに変わってしまうんです。不思議でしょ?」と、村山さんは笑顔とともに語りかけます。
工房の中では、所蔵する古代のガラスやサンプルなどを例に、その長い歴史や製造過程を説明。
「いつか、世界に46ある砂漠の砂でガラスアートを作り上げたいですね。日本なら、47都道府県の代表河川の砂で作るのも
いいかな」と、壮大な目標も話してくれました。
村山さんは、ガラス器の制作デモンストレーションも披露。溶解炉から取り出された1,400度の高熱で真っ赤にたぎる塊は、息を吹き込まれて丸く膨らみます。そして、すぐに台の上で回転させられたり火ばさみでつままれたりして、みるみる美しい波模様のグラスに変貌していきました。そのよどみない手際を目の当たりにした参加者たちは、思わず拍手。
さらに村山さんは、新しい塊の端を火ばさみでちょん、ちょんと捻り、手乗りサイズの小鳥も生み出しました。子どもたちは、あっという間の出来事に驚きながらも大喜び。お母さんも、「ガラスって、本当にいろいろな形にできるのね」と、ため息まじりにつぶやいていました。
参加者たちも、村山さんやアシスタントの方々の指導を受けながら、ガラス玉の制作にチャレンジしました。
広瀬川で採取した砂を高温で溶かし、液体状になった熱いガラスを細い金属の棒に素早く巻き取ります。棒を回転させて形状を整えていきますが、あっという間にガラスは硬化。
勾玉のような形に作った参加者は、「きれいなまん丸に作るのは難しいですね」と、苦笑いしていました。
ガラスアートの原料である砂は採取場所ごとに成分が違うため、冷え固まる直前までどんな色になるか予測が不可能。村山さんは、まず試作をして色合いを確かめ、そこからインスピレーションを得てデザイン画を作成するそうです。
「東日本大震災で被災した南三陸町や七ヶ浜町の砂でガラスを作り、地元の方々に贈る取り組みも行いましたが、ガラスの色の違いこそが、その土地にある意味を物語っていると思うんです」と村山さん。
アーティストとしての卓越した感性がそれを捉え、ふさわしい形に昇華させたものが「海馬ガラス工房」の作品。今回は、そんなガラスアートが生まれる現場を知る貴重な機会となりました。